橋ー「文蔵の滝」

 鳥媒花の代表的な「椿」。

花が上向きに落ちている様子は、

まるで地の女王が出て来たみたいだ。

 高所に沢山の「椿」があったのを、

はじめて見上げて知るのである。

 「ペンキ塗りたて!」の張り紙が橋の手前

にあり、いっしゅん渡るのをちゅうちょさせる。

 雨の日に橋の錆びを削り、苔を取り除き

一日かけてペンキを塗ってくれた人がいる。

 その人の手によつて、橋が輝きを

取り戻した。

 橋を渡った場所には、その労働を称える

かのようにスミレが咲きほこっている。

 人のこころにも穴があいたり、色あせたり

ささくれ立ってざらざらになり痛むことがある。

その痛みを和らげてくれるのも、人の温かさ

であると思う。